タイムダイバー：明日のない今日（１０）次元界面

虚ろな沈黙が船内を支配した。俺は言った。
「『明日』と『明後日』の断面をこじ開けるか」
すぐにココが否定した。
『ダメよ！断面全体が破壊される恐れがあるわ。何の為にやってきたのか分らなくなるじゃないの』
『救難信号を出してハヤカワ大佐を待ちましょう』
「借りを作るのは嫌だ」
『何をバカなことを言ってるの！』
「自力でなんとかしたいな」
アマテラスには非常時用として小口径の次元砲を積んである。そいつは異なる次元の界面に小さな穴を開けることができる。５次元空間側からタイムチューブに穴を穿てるのだ。

「次元砲にアマテラスの全エネルギーをつぎ込んだら、中に入れる程度の穴を作れるだろう」
『バカ言わないで！４次元宇宙に戻れても動けないじゃないの。宇宙を漂うだけよ』
「計算してみてくれ」
ココはふくれっ面をしながらも計算作業に取りかかった。
『必要エネルギーの９５％しかないわ。５％の不足は致命的よ』