22
11

断捨離だ。
急に思い立って物置の奥まで整理していると、昭和レトロな真空管ラジオが顔を出した。
「すご。ひょっとして、レアものだったりしないかな」
部屋に持ち帰り、ネットで調べたが似たようなものが数千円程度で腐るほど売られていた。

少しくがっかりしたものの、捨てるのはなんだか憚られて、濡らした布巾で周りのホコリを拭き取り、ガラスや金属部分の細かいところまで綺麗にすると、見ごたえのある仕上がりになった。
「悪くないじゃない」
せっかくだから使ってみようといろいろ試していると、酷いノイズを孕みつつも、それは動いた。

その日は夫が駅ナカの惣菜を買って帰ってくる日だったから、ご飯だけ炊いて本を読みながら時折年代物のラジオをチラ見して時間を過ごした。至福だ。ふふ。

「ただいま」
早速、その日の出来事について夫に話した。
「断捨離は?」

小考の後、私は片目を閉じて舌を伸ばした。
「てへぺろ」
その他
公開:20/10/04 07:00
更新:20/10/04 09:46

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容