『筋書き求婚』

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一年やって半人前、十年続けて朝飯前、あたしゃ天下の男前。芸事に限らず、真似と反復が上達への近道でございます。団子屋のおはなちゃんに惚れた若旦那。求婚指南を御隠居がしております。

「私の筋書き通りやりなさい」

「御隠居、恩に着るよ。」

「いくよ。『団子をくれるかい?ありがとよ。朴念仁と言われちゃいるが、俺も男だ。言わしてもらうよ。』ここまでいいかい?」

「言わしてもらうよ!朴念仁は酷ぇや!」

「辛抱なさい。続けるよ。団子をパクっと一息で食べて『この串みてぇに筋通すよ。夫婦(めおと)になろう。』」

「くぅ気がきいてやがる!」

練習を繰り返し、団子屋へ。
成果もあってスラスラ口上を述べ、団子をパクッと一息に食いまして。

「夫婦になろう。」

さあさ、おはなちゃん。赤く頬染め、小さくうなずき「幸せにしてくれる?」という問いに若旦那。

「ちょいと待て、先の筋書きがまだないから…」
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公開:20/09/30 11:46
更新:20/09/30 20:03
創作落語 #落語リレー 創作落語『嫁入り小噺』 (間野純 作より)

伽藍堂 無一文( 寄席 )

伽藍堂無一文(がらんどうむいちもん)
しがない噺屋風情が芸の肥やしにこちらで厄介になっております。
兄さん、姐さんがた、どうぞお見知り置きを。

たまに拝読、感想を残しやすが、
江戸弁忘れた時ゃ内緒にしといてくだせぇ。

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