ポセイドン

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100年前、地球に大きな水の球が近づいていることがわかった。人々はその水の球に畏怖の念を込めて『ポセイドン』と呼んだ。それはもうすぐ地球を水浸しにする。
30年前に、日本の女医が率いる研究チームが『死ぬときに苦しまない薬』を開発。2年後には実用化され、世界中の全ての人々に配られた。
睡眠薬やモルヒネ、またドラッグや酒とも違う。その薬を飲むと、夢を見ながら安らかに死ぬことができる。残念ながら薬は自殺にも使われてしまったが、いざという時に飲めばいいと、地球の最期を見届けることを選んだ人も多かった。

ポセイドンが迫る。飛沫をあげて地上に大量の水が降り注ぐ。少女は水のうねりに巻き込まれた。沈んでゆく水の底に沢山の人間がいた。人魚や魚と一緒に泳いでいる。水中で息ができる。なんて素敵なの!人間は変化したんだ!地球は新しく生まれ変わったんだ!

少女の幸せな夢は、静かに水の底に沈んでいった。
SF
公開:20/10/01 10:24

深月凛音( 埼玉県 )

みづき りんねと読みます。
創作が大好きな主婦です。ショートショート小説を書くのがとても楽しくて好き。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞『ハチ公、旅に出る』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[節目]入賞『私の母は晴れ女』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[縁]ベルモニー賞『縁屋―ゆかりや―』

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