Ⅱ．006 ソルベット家の嗜み

「どけどけどけ～！」
「ノリノリね。いつものヘタレ運転が嘘みたい」
「間違っても仕事でやらないでよ」
「うちの子に、こんな一面があったとはな」
　ソルベット家は、両親と長女長男からなる４人家族である。
　"ハロウィンの夢"の近縁である彼らは、(悪)ノリの良さと、優れた"素質"とはズレた"嗜好"を持つ一家であった。
　父は、強大な魔力有するディヴル種だが、知略無用の肉弾戦を好みー
　母は、絢爛な翼を持つ鳥亜種だが、猛禽の如き飛翔を好みー
　長女は、着物の似合う淑やかな美貌を持ちながら、武骨な銃を振るい、銃弾と硝煙を撒くのを好みー
　長男は、聡明な頭脳と慈愛の心を持ちながら、軽車を駆り、"死"を蹴散らす興奮に目覚めていた。
　新たな"ハロウィン"の到来を機に、各々が潜ませていた"嗜好"を開放させた一家は、"親戚"とは違う形で、その名を世界に知らしめる事になるのだが、それはまた別の御話である。