31
12
その洋菓子店のラング・ド・シャが好きだった。あの人が家族との北海道旅行で買ってきた『白い恋人』とは比べものにならず、膜のように薄い独特のざらついた食感と繊細な舌触り。ほんのりとラムが香る。
自分を象徴するようであった。
無責任な「愛してる」や不倫相手に『白い恋人』を買ってくる無神経さも、アイコスの匂いも大嫌い。けれど、触れた大きな手、撫でて髪をすり抜ける指、その笑顔が私のものでないと考えると体が痺れた。
ーーにゃあむ
「そんなに悲しいなら終わりにしたら?」
眠たそうな目、飼い猫のパンペロが喋ったように錯覚する。ざらつくちいさな舌が頬を舐めた。
涙に気づいたのは西日が目に沁みて少しあと。気づけばスマホのボタンを押していた。
「会って話がしたい。」
珈琲の熱で舌が痺れた。ラング・ド・シャを一枚齧るとやはりラムが香る。
「それでいい。」
パンペロの優しい声が聞こえた気がした。
自分を象徴するようであった。
無責任な「愛してる」や不倫相手に『白い恋人』を買ってくる無神経さも、アイコスの匂いも大嫌い。けれど、触れた大きな手、撫でて髪をすり抜ける指、その笑顔が私のものでないと考えると体が痺れた。
ーーにゃあむ
「そんなに悲しいなら終わりにしたら?」
眠たそうな目、飼い猫のパンペロが喋ったように錯覚する。ざらつくちいさな舌が頬を舐めた。
涙に気づいたのは西日が目に沁みて少しあと。気づけばスマホのボタンを押していた。
「会って話がしたい。」
珈琲の熱で舌が痺れた。ラング・ド・シャを一枚齧るとやはりラムが香る。
「それでいい。」
パンペロの優しい声が聞こえた気がした。
ファンタジー
公開:20/09/30 17:53
更新:20/09/30 19:09
更新:20/09/30 19:09
洋菓子短編⑤
ラング・ド・シャ
フランス語で猫の舌
ざらざらとした薄い食感から
パンペロはラム酒の銘柄
白い恋人はラング・ド・シャ
でホワイトチョコを挟んだお菓子
空津 歩です。
ずいぶんお留守にしてました。
ひさびさに描いていきたいです!
Twitterアカウント(告知&問い合わせ)
https://twitter.com/Karatsu_a
ログインするとコメントを投稿できます