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足早に去っていく夏。冬将軍の目覚めを察したようだ。
その狭間に生じる、僅かな時節。

秋が好きだ。
生まれた季節だからというのもあるかもしれない。

威圧的だった灼熱の光球は衰えを知り、分厚い雲の谷間から時々顔を覗かせて、いまはただ頼りない光を、音無く地上に降り注いでいる。

窓の隙間をすり抜けた風がレースカーテンを揺らし、ベッドに横たわる私の頬を撫でる。

掛け布団をすこし持ち上げ、下半身を見下ろす。
「やれやれ」
そう声に出すと、ほんの少しだけ、気分が和らいだ。

生きていれば、いろんなことがある。
見てきたし、知っているつもりだった。

しかし私は、ただ知識を持っていただけだ。それは、理解とは程遠い。
結局の所、我々は自分の身を通じてしか、本当に知ることはできないのかもしれない。

無くなった両足の付け根を少しだけ動かす。痛みはない。

窓の外を雲が渡っていく。
冬はもうすぐそこだ。
その他
公開:20/10/01 07:00

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

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