美しい実
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祖父の家の裏に里山があった。その辺一帯の土地持ちである強羅家のものである。名前の厳つさとは裏腹に子供達にはおおらかで、帰省の際、近所の子供達と一緒に虫採りに行った。秋には栗拾いや茸狩りなど、強羅家の使用人が連れていってくれた。名前は秋葉と言ったか、ずんぐりむっくりとした狸みたいな男だった。
「遠くには行かないように」
五、六人の子供達と茸狩りに来ていた時、一人の少年があっちに面白いのがあるよと声をかけてきた。その少年とは初めて会ったと思う。
「ほら見て」
赤や紫、水色、と様々な色をした宝石のような実が煌めいていた。僕の目が釘付けになった。
「あげる」
え、と振り向くと秋葉が恐ろしい顔で立っていた。
「それは神の実だから触っちゃなんねぇ」
泣きべそをかく僕の頭を秋葉はぎこちない手で撫で、
「触ると酷くただれるからな」
と言った。
僕はぼろぼろと泣いた。
あの少年の事は誰も覚えていない。
「遠くには行かないように」
五、六人の子供達と茸狩りに来ていた時、一人の少年があっちに面白いのがあるよと声をかけてきた。その少年とは初めて会ったと思う。
「ほら見て」
赤や紫、水色、と様々な色をした宝石のような実が煌めいていた。僕の目が釘付けになった。
「あげる」
え、と振り向くと秋葉が恐ろしい顔で立っていた。
「それは神の実だから触っちゃなんねぇ」
泣きべそをかく僕の頭を秋葉はぎこちない手で撫で、
「触ると酷くただれるからな」
と言った。
僕はぼろぼろと泣いた。
あの少年の事は誰も覚えていない。
その他
公開:20/09/28 13:43
射谷 友里(いてや ゆり)と申します
十年以上前に赤川仁洋さん運営のWeb総合文芸誌「文華」に同名で投稿していました。もう一度小説を書くことに挑戦したくなりこちらで修行中です。感想頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。
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