愛に包まれて

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 初めて大声で泣いた時、優しく抱きしめてくれたあの優しくて柔らかな胸の中。頭を撫でてくれたごつごつした大きなてのひら。
 何度目を開けてもいつもそこにはふたつ同じ顔があって、私の心はとても安らかで幸せな気持ちになったの。
「かわいいねえ、いい子だねえ」
 私のお腹と心を満たしてくれた、お父さん、お母さん。
 いつも抱いてくれた、どこに行くのも一緒だった。ふたりが見守ってくれたから、私は今ここにいる。ふたりの子供に生まれて本当によかった。
 花嫁の顔にベールを被せるのは、かつて悪魔にさらわれないようにするためだったというけれど、愛する人のもとに行くまで、最後まで娘を守ろうとする母の愛なんだよね。
「幸せになりなさい」
 母にベールを被せてもらい、お父さんとヴァージンロードを歩く。道の先の愛する彼が私の手を取る。
 彼の笑顔が、慈しみ、守ってくれた私の中の一番古い記憶の中の笑顔と重なった。
その他
公開:20/09/28 11:52
更新:20/09/28 12:49
弟の結婚祝いに書きました 末永く幸せにね

深月凛音( 埼玉県 )

みづき りんねと読みます。
創作が大好きな主婦です。ショートショート小説を書くのがとても楽しくて好き。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞『ハチ公、旅に出る』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[節目]入賞『私の母は晴れ女』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[縁]ベルモニー賞『縁屋―ゆかりや―』

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