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嗚呼、やりたいことが、多すぎる!
「私がもう一人居たらなあ!」
そう呟くと、鍋蓋の下から声が聴こえた。
「その願い、叶えよう」

気がつくと、隣に私が居た。
「じ、じゃあ、私は小説書く」
「なら私は、洗濯やってくる、後で交代ね!」

しばらくすると、私達は呟いていた。
「私があともう一人居たら!」
床下から声がした。
「その願い、叶えよう」
気がつくと我々を挟んで、二人の私が現れていた。

「夕食は任せて」
「続き書く」
「子供を迎えに行くわ」
「やりたかったゲーム!」
私達はそれぞれの持場へと走った。

何とかの晩餐みたいに絢爛豪華になった夕食を前にして、夫は呟いた。
「何でこんなに居るんだ?」
私達は顔を見合わせた。
「君は一人で十分だよ」
その時、ダイニングテーブルの下から(以下略)

三人の「私」はいずこかへ消えた。
たった一人の私が、夫と娘の視線を集めている。
私は肩をすくめた。
その他
公開:20/09/30 07:00

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

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