10
11

『わを〜ん』
犬が吠える。人のいぬ言葉遊び村。
そこに、今日で人生を終わらすと決めた男の姿が。
男は最後に昔きいたおとぎ話を信じてみたかった。この村に降るという怪雨だ。
が、雨は降らない。
「バカバカしい」
男が去ろうとすると、オタマジャクシが降ってきた。五線譜のような電線にひっかかると、音を奏で始める。
「この曲は」
亡くなった男の妻が愛した曲。幸せな記憶が蘇る。カエルに変わると曲は終わった。
次に魚が降ってきた。鮭や鯛や鮪が辺りを跳ね回る。そのうち魚は子供の姿に。
「圭ちんに周ちゃん!有くん!」
子供時代の友だ。男は童心に帰り心ゆくまで遊んだ。
「思い残すことはない」
まだ何かが降ってくる。ぽかんと口を開ける男。パクッ!
運動会や受験の朝に食べると不思議と活力が湧いた味。死んだ男の母が握ったおにぎりだった。
「母ちゃん……」

始まりの雨とも云われる、この村に降る怪雨の名は
『あいう』
ファンタジー
公開:20/12/03 00:03
SSG150作目 言葉遊び人シリーズ スピンオフ いつもありがとうございます またここから物語は始まる

そるとばたあ( 神奈川 )

★そるとばたあの400字SSは、ことば遊びと文章のリズムにこだわり、音を体感できる物語がコンセプトです!

★第19回坊っちゃん文学賞大賞『ジャイアントキリン群』

★2025年12月、2冊同時刊行の電子書籍
『3分間のまどろみ カプセルストーリー』(Gakken)に『恐竜バーガー』寄稿。

・カプセルストーリー(恐竜バーガー、『菊池

の選択』、六文字の返信ほか)
https://amzn.asia/d/8qmIuR7

・カプセルストーリー(特殊外来種ハンター、カンガルー・ノート、露の楽譜ほか) 
https://amzn.asia/d/iW14MdM

ショートショートの可能性と豊かさが詰まったアンソロジーですのでぜひ!
 

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容