クローゼットのおばけ

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「ママ! おばけがご飯食べたよ!」
クローゼットの中でおままごとセットを持ち込んで遊ぶのが最近のブームらしい。
「えー! おばけいるの?」
娘はクローゼットの上の棚を指差して「いるよ」とにやりとした。
一度大げさに怖がったふりをした私の反応が面白かったのだろう。
「もっと食べたいって」
娘は本物のお菓子の袋を持ってこようとするのを慌てて止め、フェルトで出来たおにぎりや果物を持ってこさせた。
「はい、どうぞ!」
お皿に盛り合わせたご飯を楽しそうに空に向かって差し出している。これは長くなるぞと、頭の中でお風呂と夕飯の支度の段取りをする。
「ごちそうさまだって」
思ったより早く終わったとほっとしてお風呂の準備をした。
夜娘を寝かしつけしながら、なんとなくクローゼットの戸を見る。戸の向こう側でミシッと一つ家鳴りがしたのを耳にした。あの中ですくすくと育っていくおばけを想像して少し寒気がした。
ホラー
公開:20/12/02 21:37

射谷 友里

射谷 友里(いてや ゆり)と申します
十年以上前に赤川仁洋さん運営のWeb総合文芸誌「文華」に同名で投稿していました。もう一度小説を書くことに挑戦したくなりこちらで修行中です。感想頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。

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