夕暮れ自動販売機

早めに仕事が終わった私は夕暮れ自動販売機へと急いでいる。
夕暮れ自動販売機は夕暮れから夜に入るまでの短い時間しか稼働していない。本来は部活終わりの学生達の為に設置された自動販売機ではあるが、その味を忘れられない大人も多い。
そんな大人が上司となれば、自然と残業も減って来る。夕暮れ自動販売機はまさに働き方改革の救世主。
夕暮れ自動販売機で売っている飲み物は二つだけ。おつカレーのルー。またあし炭酸飲料。
カレーを飲み物と言っていいのは若者の特権。家に帰って米と共にかっ食らう。
またあし炭酸飲料で一気に流し込み、げっぷと共に疲れを吐き出す。
まるでオッサンだな…と、オッサンの私は息子を見ながら思ったものだ。
そんな息子を見て、私も若かりし頃の思い出を味わいたくなった。
夕暮れ自動販売機の前、息子とばったり会った。
二人して照れ笑いして、妻の分も買っていく。
今日は年甲斐もなく友達家族を楽しもう。