本当の人魚姫

久しぶり。

今さっき絵本から飛び出してきたところ。
元気そうでなにより。子どもの頃、この絵本嫌いだったよね？嬉しい。だってこの話、真実なんかひとつも書かれてないもの。あなたとわたしの不思議な縁。今から本当のこと教えてあげる。

実は、わたし王子の家来と恋に落ちたの。声は出なくてもお互いの気持ちにすぐ気がついた。

この恋が辛くて王子を殺して人魚に戻ろうした。実らぬ恋なら彼のことも忘れたい。そして死にたくない。

わたしはね、彼に殺されたの。

彼は職務を全うしただけよ。ナイフを刺した彼の顔忘れられないな。

ねぇ、何かを得る為に何かを犠牲にするものだって誰が決めたの？

泣かないでー！ありがとう。ああよかった。わたしに手があって。あなたを抱きしめてあげることができるもの。

あなたの物語は終わらない。あなたが生きている限り。

この話が嫌いだったあなたに出会えて、嬉しかった。元気でね。