あなたに似た人

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 ある日僕は遠方の、僕と縁もゆかりも無い町を訪れていた。
 その町に着き、目的地に向かって歩いていると、前方から一人の女性が来るのが見えた。その女性の容姿は人並みだった。とても道行く人が振り返る程では無かったが、僕はその女性から目が離せなくなった。それはその女性がかつて僕の愛したヒトに似ていたからだ。

 あのヒトの容姿も人並みだったが、僕は彼女に強く魅了された。そして彼女がもうすぐ故郷に帰ると知った日、「僕じゃ駄目かな?」と短い言葉で告白した。
 すると彼女は少し驚いた顔を見せたが、すぐに微笑みながら顔を下に向けた。それだけだった。
 数日後、彼女は街を去った。それ以来彼女とは連絡をとっていない。その後僕が知った彼女の情報と言えば、先日彼女が幼馴染と結婚したという事くらいだ。

「あなたのはずないか」と、僕はあのヒトに似た女性を目で追いながら呟いた。そして頰に冷たいモノが伝うのを感じた。
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公開:20/12/01 08:00
更新:21/01/14 09:55
#失恋 #片思い

Azuki Smith( 横浜 )

写真撮影が趣味で、英国文学をはじめとした外国文学が好きな会社員
旅が好きでヨーロッパとアジアを中心に多く国を旅している
また、イギリスに住んでいたこともあり、英国文学に多くの影響を受けている
喋れる言語は日本語 (ネイティブ) > 英語 (アカデミック) >>...>> ドイツ語 (何とか旅が出来るレベル)

投稿内容はその他(主に紀行文)、青春、ホラー、ごく稀に恋愛(でも悲しい物語)

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