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凸凹の雪道を二人で進む。吐く息は白く、厚着の装備は動きにくい。
ハイキングコースにしてはちょっとヘビーな気がするが、案外、こういう場所は多い。
下手な軽装で来ると痛い目にあう。
「富士山に弾丸登頂したときなんか酷かったよね」
清美は言いながらホット・ティーを飲む。
「なつかひい、夏服のまま登ったんらもんね。アホら」
中腹の東屋で、おにぎりを頬張りながら応える。冬の登山は特別だ。そんなに大した山じゃなくても、名も知らなくても、白銀の景色は名状しがたく、いつでも私の心を鷲掴みにする。
「仕事やめたんだ」
私は危うくお茶を吹き出すところだった。
「ど、」どうして、そう訊こうとしたが、後は続かなかった。清美がそう決めたのなら、それが一番に決まってる。
頂上へと続く道は足場が悪くて通行止めになっていた。
「残念」
「また来よう」私は言った。
雪が降りだして、色のない悲しみをそっと吸い込んだ。
ハイキングコースにしてはちょっとヘビーな気がするが、案外、こういう場所は多い。
下手な軽装で来ると痛い目にあう。
「富士山に弾丸登頂したときなんか酷かったよね」
清美は言いながらホット・ティーを飲む。
「なつかひい、夏服のまま登ったんらもんね。アホら」
中腹の東屋で、おにぎりを頬張りながら応える。冬の登山は特別だ。そんなに大した山じゃなくても、名も知らなくても、白銀の景色は名状しがたく、いつでも私の心を鷲掴みにする。
「仕事やめたんだ」
私は危うくお茶を吹き出すところだった。
「ど、」どうして、そう訊こうとしたが、後は続かなかった。清美がそう決めたのなら、それが一番に決まってる。
頂上へと続く道は足場が悪くて通行止めになっていた。
「残念」
「また来よう」私は言った。
雪が降りだして、色のない悲しみをそっと吸い込んだ。
その他
公開:20/12/01 07:00
更新:20/11/30 21:12
更新:20/11/30 21:12
さまようアラフォー主夫
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