瞳の奥には何がある?

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 あの子の瞳が吸い込まれるほど深い蒼色をしていたものだから、ケアレスミスで中に落ちてしまった。
 アッというあの子の声が、やけに大きく響いたなと思う間もなく、私は優し気な感触に包まれた。
 目を開けても痛くない。恐々と息を吸ってみると、普通にできた。
 そのことを確認すると、私は上を見た。ユラユラと揺れていて上手く像を結べない。けれど、柔らかな光が私のところまで届いていることだけは分かった。
 これがあの子の瞳の中なのか。そう思うと、何だかとても不思議だった。どうやら、私はあの子の瞳の奥、水底へと向かって沈んでいるようだ。
 もちろん、戻ることだってできる。現に少し身体を動かしたら、簡単に上へ進めたから。
 けれどこの先、あの子の瞳の奥に何があるのか知りたい気持ちもあったから、私はそのまま沈むことにして、今もまだずぅっと沈み続けている。
ファンタジー
公開:20/12/01 12:42
マジックリアリズム 『幻想日和』

海棠咲

 幻想小説や怪奇小説を自由気ままに書いています。
 架空の国、マジックリアリズム 、怪談、残酷なファンタジー、不思議な物語が好きです。
 そこに美しい幻想や怪奇があるならば、どんなお話でも書きたいと思います。

 アイコンは宇薙様(https://skima.jp/profile?id=146526)に描いていただきました。

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