赤と縁

赤緑色覚異常と伝えると、大抵の人間がこう言う。
「赤と緑の区別がつかないんでしょ？」
誤解も甚だしい。似通って見えるだけで区別はつく。あんたは緑と青の区別がつかないのか？こう返せば一様に黙る。似てるからより注意を払うし、ものによっては常人以上によく見える。

たとえば今、隣の彼女の指に絡んだ、糸の結び目が見える。健常者の理屈に照らせば、緑と縁は似てるからだ。
「赤の他人と、ご縁のある人。見えても区別がつかないんじゃないの？」
赤信号の手前、立ち止まって笑う。そういうところが嫌いで大嫌いだ。
「ちゃんと見えてるよ。残念ながら」
赤い糸と真っ赤な嘘の区別なんて、つかなきゃ良かったのに。
ぐちゃぐちゃにもつれた糸は、腹が立つくらいの真緑。ついでに俺とは結ばれてもいないのも知ってるけど、知らん顔して今日も手を繋ぐ。
どのみち放す気がないんだから、区別なんかつけなくていい。結び目の先は一生追わない。