観光振興

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「少子高齢化、人口減少。
わが町は観光振興に未来を託すしかない。郷土の偉人を掘り起し、わが町の観光資源とするのだ」
町長の方針により町は観光振興に舵を切った。

斯くして、魅力再発見の名のもとに偉人探しが始まった。
だが、有名な戦国武将などこの地に縁はない。
唯一、右に左にと裏切りを繰り返した領主がいたくらいだった。当然、調査は行き詰った。
そこで考え出されたのが、領主を英雄に仕立てることだった。

領主の裏切り行為は領民を守るため。
領民に慕われた知将であり、かの武田信玄、上杉謙信も一目を置いた人物だった。

残された史料は断片的だったため、解釈の変更はたやすいものだった。
館跡地は過剰に整備され、推測された輝かしい偉業の数々を記した解説版が設置された。
観光パンフレット作成、ホームページ掲載。
町は、誕生した英雄を徹底的にPRした。

あれから10年。
あの町はどうなったのだろうか。
その他
公開:20/12/01 06:35

おおつき太郎

面白い文章が書けるように練習しています。
日々の生活の中で考えたこと、思いついたことを題材にしてあれこれ書いています。


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