あの日のリボン、新しいリボン

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「もう来ちゃダメよ」
カナちゃんが複雑そうな顔で頷く。カナちゃんの髪に飾った折り紙のリボンが風に揺れた。涙ながらに頭を下げるお母さんに促され、カナちゃんはタクシーに乗った。
小さくなるタクシー。後輩のミサトちゃんが、「寂しいですね」と、でも笑顔で言った。
「うん。でも私たちの最高の仕事は患者さんと縁を切ることなのよ」
病院内に戻り、空っぽになったカナちゃんの病室を通り過ぎる。偉そうなことを言った割に、胸が詰まった。新人の時に担当し、長い闘病を経て、奇跡的に元気になったカナちゃん。嬉しいに決まってる。でも、頭と心はいつも同じとは限らない。

(また来たの?)
随分大きくなったカナちゃん。でも、嬉しかった。
あの日交換した折り紙のリボンが真っ黒な服に付いている。涙を拭いながら、私の白い髪に新しい折り紙のリボンを置いた。
(ありがとう)
カナちゃんとあの日交換したリボンも天国に持っていくからね。
ファンタジー
公開:20/11/29 08:42
更新:20/11/29 08:50

十六夜博士

ショートショートを中心に、色々投稿しています。
よろしくお願いします。

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