時には解放感を

ガタンゴトン…ガタンゴトン…と電車が揺れる音が鳴り響く中、私は窓から見える外の景色を眺めていた。
視界に映るは雄大な大地、そして畑で汗水を流す人々、さらに緑豊かな森。
ビルや建物だけを電車から見ていた私にとって、見える景色全てが新鮮であり、懐かしくも感じていた。
家族や親戚全てが都会人だった為、自然に満ち溢れる土地には行った事もなかったが、通勤から解放された時間は何とも心地の良いもの。
急いで電車に乗って、人が多すぎるあまり見知らぬ人とぶつかって。
それが当たり前だっただけに、周りを見渡しても人がいないその空間は何とも心地よく、考えが自然と整理されていく。
ふぅ…と息を吐いていると、電車はピタリと止まり駅名の言葉と共に扉が開いていく。

「さて…少し冒険するとしますか」

駅名は見知らぬ土地、景色も見知らぬ場所。何もかもが分からぬ場所を目の当たりにして私は子供のように笑っていた。