落単流し

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 京都の鴨川では、毎年三月末日になると、落単流しというものが、京都市内の大学生たちによって行われる。
 大学生たちは、今年一年の成績表を綺麗に小舟の形に折ると、鴨川に流す。すると、その船には、学生がこの一年間で落とした単位の込められた光いくつも宿り、鴨川をユゥラリと下って行くのだ。
 光は単位の種類ごとに違うことが、最近、社会学の研究で明らかにされた。
 例えば、般教なら緑色に、必修なら赤や橙色に、卒業論文なら銀色に、といった具合だ。
 三月の末日とは言え、鴨川はまだまだ寒い。だが、この煌びやかな光を宿した船を一目見ようと、鴨川の畔には観光客や大学生カップル、自身もかつては落単流しをやったことのある社会人までもが集まる。そして、この落された単位たちの演じるイルミネーションを見ては、様々な感慨にふけるのだ。
 すでに五〇年以上の歴史を持つ落単流しは、今や京都の風物詩の一つになっているのだ。
ファンタジー
公開:20/11/30 08:01
マジックリアリズム 『幻想日和』

海棠咲

 幻想小説や怪奇小説を自由気ままに書いています。
 架空の国、マジックリアリズム 、怪談、残酷なファンタジー、不思議な物語が好きです。
 そこに美しい幻想や怪奇があるならば、どんなお話でも書きたいと思います。

 アイコンは宇薙様(https://skima.jp/profile?id=146526)に描いていただきました。

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