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目が覚めるように鮮烈な、緑色のチカチカした光を放ち、ショベルカーを載せたトラックが通りすぎていった。そのライトがいつかの冬を思い出させ、きゅっと懐かしい気持ちになる。

帰宅した私は薪ストーブに火を入れて。そのまま鍋を載せて南瓜のスープとパンを温めた。

ーー食後、椅子に座ってしまったのがいけなかった。暖かさに身をゆだね、いつの間にか夢に落ちた。

故郷のだだっ広い空き地に葉を広げるドイツトウヒ。冬になると大人達が飾り付け、華やかな、巨大なクリスマスツリーに変身する。その冬私は、何かと会話をしたのだった。

寒いね。当時友達がいなかった私のそれは一人言だった。だから。
寒いね。ふいに頭上から降った声は幻のようで。

夢が覚め、あとは目を開けるだけだった。「思い出してくれたの」現実で同じ声がした。緑の優しい声。

外のコトンと言う音にビクッとする。玄関を開けると、一枝のドイツトウヒがあった。
公開:20/11/30 06:25

綿津実

自然と暮らす。
題材は身近なものが多いです。

110.泡顔

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