ゆかり堂書店の奇跡

その民家の路地裏を抜けると、通りの斜め向かいに『ゆかり堂』という古本屋があった。入ってみると、好々爺な店主が好みの本を知っていたかのように勧めてくれた。その本はどれも稀少で私を虜にした。

ゆかり堂に通い詰めたある日、店主からハガキが届いた。〈縁（ゆかり）の会に参加しませんか。佐藤様ゆかりの書をご用意してお待ちしております。〉とある。
縁の会とは何なのか？　
当日。店を訪れると、私を含め四人が縁の会に集った。店主は藤原家の末裔らしい。平安時代の朝廷、藤原家ゆかりの一族である。縁の会に招待されたのは、私「佐藤」と「伊藤」「後藤」「近藤」つまり藤原家の分家一族が奇跡的に集ったのだ。店主は各本家ゆかりの本を用意してくれていた。それぞれが先祖の歴史に触れ、語り合い、縁の会を堪能した。
この一族は、いづれ未来を幸せに導くだろう。今、神の目線で見ている私が描く物語に、縁（ゆかり）のある人物なのだから。