夕暮れ自動販売機

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昔々の話。日が暮れると物の怪が現れると噂される山あり。故に暗くなると山には誰一人近づこうとしなかった…

「よぅ!東の地蔵」
『おぅ!北の地蔵』
「何飲む?」
『珈琲』
「もしかしてまだ仕事が?」
『ああ、今日もいっぱいお願い事されちゃってさ。私、交通安全の神なのに金持ちにしてくれ~とか、彼氏がほし~とか、的外れな事ばっかり。もう疲れたよ…』
「でも、やるんだろ?」
『そうだねぇ…小さい子が一生懸命、お母さんの病気が治りますようにって願ってくれているんだ。それぐらいは叶えなくちゃ』
「…こっちは今日、仕事ないんだ。手伝うよ」
『いいのかい?』
「ああ、その代わり終わったらこの自販機で酒の一杯でも奢ってくれよ」
『分かったよ』

当時、自動販売機なんてなかった時代。
土着神は未来の技術を人が訪れぬ夕方以降に多用した。
また、自動販売機を目にした当時の人は怪しい光を放つ箱を物の怪と呼んだ。
SF
公開:20/11/29 20:26

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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