蛍光細工の指輪

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 神社の縁日に出かけたら、蛍光細工屋が店を出していた。店番をしていたのは、私と同じくらいの年齢の少女だった。
 他の屋台のように呼び込みをするでもなく、手元に置いてある本を静かに読んでいる姿からは、およそ商売っ気は感じられなかった。
 けれど、目の前に出された台の上に置かれている蛍光細工を見て、私は思わず息を止めていた。蛍の光だけで作られた細工物なんて、今までに見たことがなかったからだ。
 店の前に並べられた指輪やブレスレットは、蛍の光を繋ぎ合わせて作られていた。昼間だというのに、どこか儚げでもあるその光は、私の目に、どんな宝石よりも綺麗に映った。
 欲しい。
 私は単純にそう思い、指輪を下さいと少女に言ってお金を渡した。彼女は無言で差し出されたお金を受け取ると、指輪を私の右手に嵌めてくれた。
 淡く輝く指輪は、ほんのりと暖かかった。
ファンタジー
公開:20/11/28 06:59
更新:20/11/30 08:24
マジックリアリズム 『幻想日和』

海棠咲

 幻想小説や怪奇小説を自由気ままに書いています。
 架空の国、マジックリアリズム 、怪談、残酷なファンタジー、不思議な物語が好きです。
 そこに美しい幻想や怪奇があるならば、どんなお話でも書きたいと思います。

 アイコンは宇薙様(https://skima.jp/profile?id=146526)に描いていただきました。

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