新入社員とハンドパン

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 その音はたどたどしく、そして幻想的。
 その不思議な音色に出会ったのは、英子が公園を通った時だった。

 英子は広告デザイン会社の新入社員。上手くやれず、失敗ばかりの毎日だった。もう転職を考えていた。
 そんな時、ハンドパンの音色が足を止めた。

 それは金属製の体鳴楽器。2000年から世に出だしたという歴史の浅い楽器。     

 そう教えてくれたのは70歳を超える利枝さんだった。
 彼女は、公園でハンドパンを練習している。まだ不自然な音色。やり始めの音だ。
 理由を聞くと、どうしようもないような困った笑顔を見せた。

「だってねぇ…音が綺麗じゃない。大好きなのよねぇ」

 英子も広告のデザインは大好きなのだ。

 利枝は3か月もすると美しい音色を奏でるようになった。

 続ければ、今よりずっと好きになる。

 英子は今も広告デザイン会社の仕事を続けていて、随分と失敗は減ったそうだ。
その他
公開:20/11/28 04:21

福田天太郎

はじめまして。プロフィールを見てくれてありがとうございます。とっても嬉しいです。

ジャンルは濃い恋愛以外はなんでも書きます。
ショートショートも大好きです。やはり源流は星新一先生ですね。


カクヨムでハイジの続きとか小説書いてます。こちらもよろしくお願いします。

 @hukudahappy
 

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