双子の姉妹

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 「気づかないんだね、姉だよ私」
 キスのあと、薄く笑って彼女は言った。西日が差し込む空き教室。話があると呼び出され、無言で唇を重ねられた。
 彼女には、この高校に双生児の姉がいる。容姿はもちろん、髪形までそっくりだ。妹とつきあって、一年過ぎた僕でさえ、ときに二人を見間違える。
 うつむく彼女の顔を見て、まさかと僕はうろたえた。
 一つだけ、確実に見分けるすべを知っている。
 「左胸のホクロ?」
 察したように彼女が囁く。僕が小さくうなずくと、制服のリボンを解いて、シャツのボタンを三つ外した。
 そのまま右手で下着を五センチ下にずらす。
 丸みを帯びた白い肌。あるはずの、小さなホクロはそこにない。
 「姉の体を知っているんだね」
 そこでようやく、妹の仕掛けた罠に気づく。
 半年前から、僕は密かに姉とも関係していた。
 妹が泣いている。
 床に落ちる雫をぼんやり眺め、恋の終わりを僕は知る。
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公開:20/11/28 03:27
更新:20/12/13 02:50

掌編小説( 首都圏 )

Twitterで掌編小説を書いています。本業は別ジャンルの物書きです。好物はうまい棒とダイエットドクターペッパー。
フォロワーさんに「ショートショートガーデン」を教えていただきました。どうぞよろしくお願いします。
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イラストはミカスケさん(https://twitter.com/oekakimikasuke)やノーコピーライトガールさん(https://twitter.com/nocopyrightgirl)の作品です。写真はフリー素材を利用させていただいています。

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