花の都

16
8

この都に来てから手の甲から蕾がほころび始めた。
「その花は、あなたの栄養分を食事としている。食事がおわるまで、あなたを守ってくれる」
花の都ではいつしか食物連鎖で人間が被食者になった。
花は肩から、背中からと、次々に身体中に生えるらしい。
「人間はそのうち贄となり、土と化す」
「シスター、それなのに、どうしてここに住む人がいるんでしょう」
「贄になるまで、数十年風邪をひくこともないし、病気にならない。どこか高い所から落ちても大量の花が下敷きになって、事なきを得るはず」
「この都を出たら花はどうなるんでしょうか」
シスターは落ち着いていた。自らの運命を受け入れているのだろうか。神が花を愛したこの都を。
「それは分からない。出た者はいないから。わたしもね」
ファンタジー
公開:20/11/28 01:46
更新:20/11/28 15:29

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容