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「おじゃましま〜す」
おっかなびっくり踏み込んだ先には大理石の床があり、僕は早々に面食らった。
やや廊下が薄暗いのはいかにもな感じがするが、やぶれた提灯が吊り下がってるでもなく、オレンジ味がかったプラスチックカバーの照明はなかなかにおしゃれだ。
すだれをぬけるとダイニングがあり、シミひとつない薄黄色の長テーブルがオープンキッチンの前に陣取っていた。
「予想外だな」
僕が言うと、鼠男はへへっ、と少しく得意げに笑った。
「この凄まじい匂いがなけりゃ、ちょっと羨ましいくらいだよ」
「言ったろ、あんたにゃ臭いって」
「何の匂いなんだ」
鼠男はくんくん、と鼻腔を動かし、うっとりした表情で言った。
「チーズさ」
僕はもう一度辺りを見回した。
「その置物……」
「モッツァレラ」
「すだれは……」
「裂けるチーズね」
「大理石……」
「ババリアブルー」
夢にまで見た食べられる家だった。
だが現実は臭い。
おっかなびっくり踏み込んだ先には大理石の床があり、僕は早々に面食らった。
やや廊下が薄暗いのはいかにもな感じがするが、やぶれた提灯が吊り下がってるでもなく、オレンジ味がかったプラスチックカバーの照明はなかなかにおしゃれだ。
すだれをぬけるとダイニングがあり、シミひとつない薄黄色の長テーブルがオープンキッチンの前に陣取っていた。
「予想外だな」
僕が言うと、鼠男はへへっ、と少しく得意げに笑った。
「この凄まじい匂いがなけりゃ、ちょっと羨ましいくらいだよ」
「言ったろ、あんたにゃ臭いって」
「何の匂いなんだ」
鼠男はくんくん、と鼻腔を動かし、うっとりした表情で言った。
「チーズさ」
僕はもう一度辺りを見回した。
「その置物……」
「モッツァレラ」
「すだれは……」
「裂けるチーズね」
「大理石……」
「ババリアブルー」
夢にまで見た食べられる家だった。
だが現実は臭い。
ファンタジー
公開:20/11/28 07:00
更新:20/11/28 07:51
更新:20/11/28 07:51
100作目!
さまようアラフォー主夫
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