几帳面な植物

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 日当たりの悪い森の真ん中に暮らす几帳面な男は、趣味の一環として商人から買った植物の種を家の隣に蒔いた。
 商人曰く、主人を認識して大きくなる、との事だったので、男は決まった時間に水をやり、決まった時間に観察して、成長の様子をノートに記した。
 男の几帳面な育て方のおかげか、植物はぐんぐんと成長し、高さは家の上部にある煙突ほどにまで伸び、家と寄り添うようにして花を咲かせた。
 男はとても満足して、花にちゃんとした名前をつけた。
 そんなある日、男はいつものように太陽の光を浴びようと外に出た。
 しかし外は薄暗い家の中より暗い。太陽はとっくに昇っている時間帯だ。雨でも降るのか、と頭上を見上げると、巨大な葉の葉脈が目に入った。
 家の隣から生えた植物は、大きな葉で家の周辺を覆うと、空から降り注ぐ太陽の光を一身に受けていた。
その他
公開:20/11/27 21:31

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