水占い師の悲しみ

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 水占いで知ることができるのは、死の予兆のみなのだと、かつて師匠は言っていた。
 優しい声音だったが、とても悲しげだった。
 あの時、私は師匠の言葉の重み、そして、悲しげな響きの意味を取り違えていた。
 あれは、死の予兆しか占うことができない、そのことに対する悲しみを湛えていたのではなかったのだ。
 むしろ、あれは私たちの占いが人々に相手にされないことに対する悲しみだったのだ。
 私は歩きながら、昨晩の宿りを与えてくれた、園守だという女性の顔を思い出していた。
 あの人は、私が朝顔は死の予兆だと述べると、思わず、というように苦笑していた。商売柄、そういう反応には慣れているはずなのに、あの苦笑だけは妙に堪えてしまった。
 感謝を示すために誠意を込めて行った占いの結果が一笑に付されてしまう。それこそが、師匠の言葉に込められていた悲しみだったのだと、あの時、私は思い知ったのだ。
ファンタジー
公開:20/11/28 09:07
ハイファンタジー 『ダークファンタジア』

海棠咲

 幻想小説や怪奇小説を自由気ままに書いています。
 架空の国、マジックリアリズム 、怪談、残酷なファンタジー、不思議な物語が好きです。
 そこに美しい幻想や怪奇があるならば、どんなお話でも書きたいと思います。

 アイコンは宇薙様(https://skima.jp/profile?id=146526)に描いていただきました。

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