聞こえているといいな
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幼い頃、神社のお祭りで迷子になったことがある。
「おとーさんどこぉ...」
慣れない草履で転んで、せっかくの浴衣も泥だらけ。目に溜まっていた涙は、すぐに溢れ出した。不思議な男の子がやって来たのはその時。
「どうしたの」
狐のお面を着けた男の子は私の顔を覗き込む。そして、頭を撫でてくれた。
「迷子だね。おいで、お父さんに会いに行こう」
差し出された手を迷いなく握り返す。
「良い子。良い子には、ご褒美あげなきゃね」
その子が差し出した小さな飴を口に含むと、不安だとか恐怖とか、そんなものはすぐに消えてしまった。
あの後、すぐお父さんが見つかって、気付けば男の子は消えていた。お父さんに話すと、「きっと神様が助けてくれたんだよ」と言った。
その神社は今はすっかり廃れてしまったけれど、私は毎年お祭りの時期、その神社へ足を運ぶ。当時はお礼を言えなかったから。
「あの時はありがとうございました」
「おとーさんどこぉ...」
慣れない草履で転んで、せっかくの浴衣も泥だらけ。目に溜まっていた涙は、すぐに溢れ出した。不思議な男の子がやって来たのはその時。
「どうしたの」
狐のお面を着けた男の子は私の顔を覗き込む。そして、頭を撫でてくれた。
「迷子だね。おいで、お父さんに会いに行こう」
差し出された手を迷いなく握り返す。
「良い子。良い子には、ご褒美あげなきゃね」
その子が差し出した小さな飴を口に含むと、不安だとか恐怖とか、そんなものはすぐに消えてしまった。
あの後、すぐお父さんが見つかって、気付けば男の子は消えていた。お父さんに話すと、「きっと神様が助けてくれたんだよ」と言った。
その神社は今はすっかり廃れてしまったけれど、私は毎年お祭りの時期、その神社へ足を運ぶ。当時はお礼を言えなかったから。
「あの時はありがとうございました」
その他
公開:20/11/26 14:41
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