エム（つづき）

カナは英語が苦手で、ノートに英文を写すのが大嫌い。ある日ノートを開くと、カナの書いた"m"の字が、イモムシみたいに這いながら文字を食べていた。可愛い…カナは"m"をエムと名付けた。エムを見たさにノートを開き、エムの食べた穴開き文を読むうちにカナの成績は自然とあがったが、ある日可愛いエムがノートのはしで動かなくなっていた。
「エム！エム！エム！」
カナの涙がこぼれ落ち、ノートの文字が滲む。とその時、ポン！ポン！ポポンッ！滲んだ文字の1つの1つから小さな二葉が生まれ出た。かと思うとぐんぐん伸びて、パックにぎっしり詰まったカイワレみたいにたちまちノートいっぱいの緑になった。
とその時、カイワレ緑の間から黄色い蝶が舞い上がり、羽をパタパタと歌いだす。what kind of …how do you enjoy …happy …微かに聞こえてくるのは、昔ノートに書いた覚えのある沢山の言葉たち。