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別れ際のラブレターほど姑息なことはない。
夫はいつもそうだ。
どうしてこんな人と結婚したんだろう。クールで素敵に思えたところも、今では無口な甲斐性なしに感じる。
日々の忙しさに徐々に摩耗し、互いを思いやる気持ちの形はおろか、名前だってもう、思い出せない。
無責任な色恋に身を沈める方が楽だ。足のつくような浅瀬で揺蕩う手軽さで、私は夫を裏切り続けた。今思えば幼稚な子供じみた駄々のようなものだったかもしれない。
ごっこ遊びの虚無感が、不思議と心の穴を埋めてくれた。
間違っていることは知っている。でも、これ以外に私は、私の演じ方を知らない。
病床で弱っていく夫の手、明日、もし目が覚めたらやり直そう。心電図が止まる今際の際まで楽観的だったのだから、自分で呆れる。
遺品を整理していると一通の手紙があった。
「何よ、今更‥」
胸を満たす思いや、流れ溢れたものの名も、今やうまく思い出せない。
夫はいつもそうだ。
どうしてこんな人と結婚したんだろう。クールで素敵に思えたところも、今では無口な甲斐性なしに感じる。
日々の忙しさに徐々に摩耗し、互いを思いやる気持ちの形はおろか、名前だってもう、思い出せない。
無責任な色恋に身を沈める方が楽だ。足のつくような浅瀬で揺蕩う手軽さで、私は夫を裏切り続けた。今思えば幼稚な子供じみた駄々のようなものだったかもしれない。
ごっこ遊びの虚無感が、不思議と心の穴を埋めてくれた。
間違っていることは知っている。でも、これ以外に私は、私の演じ方を知らない。
病床で弱っていく夫の手、明日、もし目が覚めたらやり直そう。心電図が止まる今際の際まで楽観的だったのだから、自分で呆れる。
遺品を整理していると一通の手紙があった。
「何よ、今更‥」
胸を満たす思いや、流れ溢れたものの名も、今やうまく思い出せない。
公開:20/11/26 11:20
更新:20/11/26 11:32
更新:20/11/26 11:32
Love Letters④
空津 歩です。
新シリーズ「人喰い病院」はじまりました。
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