ユカリーブラリー

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 今日も受付前は予約した客で長蛇の列だ。
 ひび割れたレコード、錆びた缶バッチ、片方だけの手袋・・・
 先輩は手際よく客にゆかりの品を渡していく。
「ゆかりの品も人それぞれですね、先輩」
「他人から見れば大したものでなくとも、本人にとっては大切な思い出が詰まっている。そんなゆかりの品を保管・提供するのがこの図書館の大切な役割なんです」
 すると突然、サングラスの男がカウンターを叩き「早く金ぇ出せ!こらぁ!」と叫んだ
 緊張で辺りが静まり返った。
 その時先輩が「小西様ですね。お待ちしておりました」と笑顔で登場し、よれよれの一万円札を差し出した。
 男はその一万円札を恭しく天井に掲げ、両目から大粒の涙を流した。
「アニキ!高いラーメン食えってくれた一万、お守りにしてます!今日やっと自分のラーメン屋出せました!」
 先輩は「ゆかりの品も人それぞれですね」とにっこり笑った。
ファンタジー
公開:20/11/26 11:08
更新:20/12/01 12:38

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