夕暮れ自動販売機

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商店街の路地裏にポツンと佇む自動販売機。中には何も入っておらず、お金を入れてもすぐに戻って来る。
しかし、この自動販売機は晴れた日の夕方、百円を入れてボタンを押すと商品が出てくる。
出てきたそれを掴み取る。夕日の様に真っ赤なそれを私は夕日の欠片と呼んでいる。
夕日の欠片は太陽みたく熱くはないが、じわじわと私の手のひらを焼く。
火傷しそうな温かさに最愛の妹を思い出す。両親の離婚で離ればなれになってしまった私達。
あの日、妹は強く私の手を握った…あの時と同じ痛みが私の手のひらを襲う。
この熱と痛みは妹のものだ。
熱は徐々に引くが痛みは体に残る。それすらも愛おしい。
熱を感じなくなった夕日の欠片を私は空き缶同様にゴミ箱へと捨てる。スマホが鳴った。
『お姉ちゃん。今日も手が痛い!』
妹の涙声に私はホッとする。私達は繋がっている。
きっと同じであろう手のひらの火傷痕を見て私は「大丈夫だよ」と告げた。
公開:20/11/27 18:59

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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