天使にかまれる

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天使だけは、ソーシャルディスタンスとは無縁だ。

だって、誰もその目で見ることができないのだから。

未知のウイルスさえ、取り憑くことができないのだから。

みんなの目の前を、天使がゆらゆらとたゆたっている。

ウイルスの代わりに誰に舞い降りようか、思案している。

人と人は迂闊に近づけなくなった。

握手なんて、もってのほか。

その距離を、その隙間を、天使が埋めようとしてくれている。

ふいに後ろから背中をトントンとたたかれる。針に刺されたように首筋がチクっと痛む。

振り向けば、誰もいない。

それは、きっと、天使の悪戯。

触れ合うことを、触れ合うことの大切さを、忘れないで。

そう、天使がささやいている。
その他
公開:20/11/27 17:32

ふみなか( 東京 )

40代半ばの会社員。家族は妻、中3息子、小6娘。つらつらと文章をつづるのが好きです。読んでいただけたら嬉しいです。

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