若き歴史家の悩み

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 歴史に、過去に意味はあるのだろうか?
 私はリディフィナの地を旅しながら、この問いに悩まされている。自分が過去の亡霊たちを商売道具としている身でありながらだ。
 リディフィナの地は、すっかり変わってしまった。かつては、美しい自然や街が存在していた。人々は自分たちの住む街の歴史を誇りとし、過去から知恵を汲み取っていた。
 それが今はどうだ。戦争が、それも気の遠くなるほど長く酷い戦争が、勝者を生み出すことなく終わって見れば、そこには荒廃した街と荒れ果て汚された大地しか残されていなかった。
 人々は生きるのに精いっぱいで、もはや過去に思いを馳せる者はおらず、また、過去がそのような人々を助けることもなかった。
 その事実に、荒廃した街の史跡調査を命ぜられ、各地を旅している私は打ちのめされ、ことあるごとに疑問を連ねてしまうのだ。
 歴史に、過去に意味はあるのだろうか、と。
ファンタジー
公開:20/11/27 07:50
ハイファンタジー リディフィナ物語

海棠咲

 幻想小説や怪奇小説を自由気ままに書いています。
 架空の国、マジックリアリズム 、怪談、残酷なファンタジー、不思議な物語が好きです。
 そこに美しい幻想や怪奇があるならば、どんなお話でも書きたいと思います。

 アイコンは宇薙様(https://skima.jp/profile?id=146526)に描いていただきました。

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