憂いの川文

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 永麗川のセツナ殿から川文が届いた。川の流れを頼りにして、水泡で作られた文が届くのを見た時には、少々顔を顰めてしまった。
 流麗な、それでいて読みやすいセツナ殿の泡文字を目にした時には、思わず舌打ちをしてしまったほど。
 また何か夢見心地のことでも書かれておるのかと思いつつ、中身を川の流れに身を任せながら読めば、昨晩、セツナ殿が見た悪夢が記されていた。
 かのさざめきの森が燃えたという。夢ではあったが、単なる夢見かそれとも正夢か分からぬがゆえに、各地の川姫、川御子にこの文をお送りするとのこと。
 セツナ殿の心配症は今に始まったことではないが、今回は真面目に受け取るべきか。百年前の興津川の川御子のこともある。
 セツナ殿の夢見がいい加減であることも重々承知してはいるが、一度、岩魚のガッショウにでも内情を探らせるが吉かと思った。
ファンタジー
公開:20/11/27 07:33
和風ファンタジー 『和幻之郷』

海棠咲

 幻想小説や怪奇小説を自由気ままに書いています。
 架空の国、マジックリアリズム 、怪談、残酷なファンタジー、不思議な物語が好きです。
 そこに美しい幻想や怪奇があるならば、どんなお話でも書きたいと思います。

 アイコンは宇薙様(https://skima.jp/profile?id=146526)に描いていただきました。

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