袖
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街の雑踏で、人とぶつかった。謝って去ろうとしたが、去れない。袖が絡まったのだ。
すると空いているほうの相手の手が、別の人にぶつかり、また絡まった。
その別の人の袖もまた別の人の袖と絡まり、以下くりかえし。
私は列の動きを一身に受け、見当もつかない方向へ進むしかなかった。
列は交差点を越え、歩道橋を越え、ハイウェイを越え、摩天楼を越え、どこまでも進んだ。
とうとうひと気がまったくなく、あるものと言えば海くらいの、断崖絶壁にまで行き当たった。
鼻先に崖が迫っているのに、列はちっとも止まってくれない。思わず振り返る。
「あの、ちょっと、どうにかなりませんか」
「なりません」
とうとう崖っぷちに辿り着き、諦めかけたとたん、列が止まった。
ふと下を見ると、手があった。その持ち主は目を丸くして、崖につかまっていた。
「これも何かの縁でしょうね」
私はそう言って、その手を掴んだ。
すると空いているほうの相手の手が、別の人にぶつかり、また絡まった。
その別の人の袖もまた別の人の袖と絡まり、以下くりかえし。
私は列の動きを一身に受け、見当もつかない方向へ進むしかなかった。
列は交差点を越え、歩道橋を越え、ハイウェイを越え、摩天楼を越え、どこまでも進んだ。
とうとうひと気がまったくなく、あるものと言えば海くらいの、断崖絶壁にまで行き当たった。
鼻先に崖が迫っているのに、列はちっとも止まってくれない。思わず振り返る。
「あの、ちょっと、どうにかなりませんか」
「なりません」
とうとう崖っぷちに辿り着き、諦めかけたとたん、列が止まった。
ふと下を見ると、手があった。その持ち主は目を丸くして、崖につかまっていた。
「これも何かの縁でしょうね」
私はそう言って、その手を掴んだ。
その他
公開:20/11/27 07:24
更新:20/11/27 07:29
更新:20/11/27 07:29
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