ショッピングモール

エレベーターに乗ると、スピーカーから懐かしい音楽が流れてきた。でも思い出せない。どこで聴いたっけ？

ここはショッピングモール。休みの日には、両親と一緒によく出かけるのだけど、今朝はちょっと喧嘩をした。
「ちょっとトイレ行ってくるわ」
「あら、あたしも。ユミは？」
私は小さく首を振った。ちょっとした反抗心も交えて。

二人が居なくなると、またあの音楽が聴こえてきた。階段の方だ。
行くと、踊り場の壁に木の扉があった。クリーム色の壁面には似つかわしくない、どこか見覚えのある古い扉。

階段を降り、少し悩んだ末に恐る恐る取っ手を回して中を覗く。
私は驚いて小さく叫んだ。
祖母の家だ。
廊下の向こうを、誰かが通り過ぎる。
「お婆ちゃん！」
気がつくと、足を踏み入れていた。後ろで扉が閉まる。

優しかった祖母。

でも、もう死んでる。

奥の部屋から木の床の軋む音が聴こえてきた。

嫌な予感がする。