黒板と願い事

　その学校には不思議な黒板があった。なんでも、願いを叶えてくれるのだという。
　ある日、日直の生徒がその黒板に「サッカーボール」と書いた。すると次の日に、新品のサッカーボールがその黒板の前に置かれていた。
　別の日、今度は「休みが欲しいと」と生徒が書いた。
　すると今度も、翌日に突然学校が臨時休校になり、生徒たちは喜んだ。しかし保護者たちはどこか不安げだった。
　さらに別の日、「学校に行きたくない」と書いた生徒がいた。
　次もきっと休みになるのだろう、と生徒たちは期待したが、翌日は臨時休校もなく、通常通りの登校日だった。
　さしもの黒板でもこれは無理だったか、と生徒達が黒板を見に行くと、黒板には控えめな大きさの字で、
「PTAを敵に回すのはちょっと……」
　と書かれていた。
　どうやらいつも無表情な黒板にも苦手なものがあるらしい。