絵の中の家

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絵の中の家が燃えるのを子供たちと絵の中から見ていた。
窓が割れ黒い煙が噴き出し炎が見える。額縁に遮られた黒煙がキャンバスの半分を占める空で渦を巻き青空を夜空に変える。
警官が立入禁止の黄色いテープを僕らの前に張る。消防車は来ない。
子供たちは少しはしゃいでみえる。怖がりの息子はこれが絵の中のことだと知り余裕が出てきたようだ。娘はビデオ通話で仕事中の世界線の僕へ状況を説明している。マッチ十本でだよ、と声がする。
結局、消火活動もなく、瞬く間に家は灰になりキャンバスは更地になった。
警官は黄色いテープを外すと自転車に乗って立ち去ってしまう。
そろそろ僕らも引き揚げようか、と絵画を後にする。娘が額を外したキャンバスを抱える。確かに我が家で絵心があるのは娘だろう。額は、と尋ねると、あれは古臭いから、と笑う。まあ、好きにすれば良い。
娘が息を吹きかけると白いキャンバスが現れる。灰が風に舞い、消えた。
その他
公開:20/11/24 18:29

たそがれる猫の城

主にTwitterで140字小説やマイクロノベル等、短いお話をのんびりと書いています。

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