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「そうです、あなたはまったく正しい。何も悪いことはしていません」
ヒョロ長い体型の鬼は言った。
「だったらなんとかしてくださいよ、こんなの理不尽だ」
鬼はぽりぽり、と角の生え際を掻いた。
「世の中そういうもんです」
男はみるみる顔を赤らめて叫んだ。
「僕は悪くないんだ!」

一時間前、彼は横断歩道を渡っていた。信号は青。道路の向こうからは車が向かってくる。彼は見向きもしなかった。やや異常な速度で近づいてくる気配は感じたが、止まるに決まっている、そう思っていた。

だが男はいま、此岸の際に立ち尽くしている。

「あいつはどうなったんだ、僕を轢き殺した奴は」
「持病の発作です。彼はもう彼岸に渡りましたよ」
男は頭を抱えた。
「こんなはずはない。こんなことで終わるわけはないんだ」
鬼はつまらなさそうに痩けた頬を擦りながら言った。

「死んだらね、一緒なんですよ。正しかろうと、間違っていようと」
ファンタジー
公開:20/11/26 07:00

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

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