トレーディングカード

社長の息子である俺は事ある毎にそれを強調していた。それを言えば皆が俺に従う。『社長の息子』それは最強の手札だった。
大学に入り、俺はそいつと出会った。そいつは俺と同じく社長の息子だった。でも俺と違い手札を使おうとしない。そいつは真っ当にリーダーシップを発揮し、皆を従えていた。
悔しかった。俺の最強の手札は最強ではなくなった…
だから俺はそいつに交渉を持ち掛けた。手札を交換しようと。
俺は『社長の息子』の手札を差し出した。そいつも『社長の息子』の手札を差し出した。交渉成立だ。
俺はそいつの最強の手札を使い、大学でトップを取るつもりだった。
しかし、そいつから受け取ったカードは『借金まみれの町工場の社長の息子』。
何だこれは！屑手札じゃないか！
激怒し詰め寄る俺にそいつは言った。
「その手札から与えられる貧しさが僕の強みだった。僕は強みを失ったけど、これで工場の皆を救えるよ」
俺の完敗だった…