夕暮れ自動販売機

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長く戦争中であるA国とB国。その国境には1台の自動販売機が存在する。
いつからあるのか、誰が置いたのかは不明。ただ、その周囲だけは非戦闘地帯である事を両国暗黙の了解としていた。
「なあ、この世界で最も安いものって何か分かるか?」
A国の兵がB国の兵に聞いた。
「俺ら兵の命さ」
B国の兵は頷く。
『確かに兵の代わりなんていくらでもいるからな。このジュースよりお手軽に補充される』
A国の兵は苦笑いを浮かべた。
『それじゃ、また戦場で』
「どちらが死んでも恨みっこなしで」
A国B国の兵が自動販売機から離れる。そして非戦闘地帯を抜けると両者振り向き、銃を抜いた。
乾いた銃声が鳴る。両国の兵の血が自動販売機へと飛び散った。
血で真っ赤に染まった自動販売機はまるで夕暮れのよう。
悲しさを抱え、時と共に夜のような黒へと変わっていく。
明けない夜はない。そう信じたいが今も自動販売機には夕暮れしか訪れない。
公開:20/11/25 19:43

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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