ホムンクルスの花嫁【改】

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コトコト…
沸騰する特大サイズのフラスコの中に、うっすらと白い影が写る。
ハーブの香りがする部屋で、ファウストⅡ世は今か今かと、ホムンクルス誕生の時を待ち詫びていた。
天涯孤独だった彼。
父親のファウストⅠ世から教わった錬金術の腕を磨きつつこの日を願った。
理想の妻となる女性の誕生を前に、はやる気持ちを抑えきれず腕が震える。

ここでもう一度、気質の調整を誤ってないか?頭の中でおさらいしてみた。
うっかり胆汁質にでもなろうものなら、短気な嫁の尻に敷かれるだろう。
かと言って、憂鬱質でいきなり倦怠期を迎えるのもNG。
理想となるのは、社交的で明るい多血質のハニーだが…おお!
待ちかねた彼の前にガラスが割れて中から見目麗しいたおやかな女性が現れた。
彼女の瞳に映るのは、針金のように痩せた髪のない人形の姿。
何一つ確かな物の無い世の中で、こうして二人のホムンクルスが互いに結ばれ契りを交わした。
ファンタジー
公開:20/11/25 15:50
更新:21/03/18 12:35

水鏡かけら( 日本 )

執筆のリハビリがてらに、書いております。
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