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その日、私はとある夢を見た。
それは庭にある桜の下で横たわり静かに眠る自分の姿を上から見ていると言う不思議な夢だった。
はっきりしている事は二つ。
見上げれば、闇夜に綺麗な満月が浮かんでいた事。そして、私の命がその瞬間に散った事である。
「はっ!!」
気付けば、私は寺の寝室で眠っていた。
「ああ、あれは夢だったのか。それにしても命とは何と儚いものか。だが、あの光景は私の人生そのものではないか。忘れないうちにこの気持ちを和歌に認(したた)めておこう」

「願わくば 花の下にて 春死なむ そのきさらぎの 望月の頃」

「師匠、この和歌はどう言った意味があるのでしょうか」
側に控えていた従者が尋ねた。
「ああ、これかね。万人、誰にでも死は必ず訪れる。それは明日かもしれないし、何十年後かもしれない。だから、いつ死んでも後悔しない生き方をしろと言う事だよ。いつ花開き、散るかは誰にも分からないからね」
公開:20/11/25 12:28
更新:20/11/25 13:05

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