燃えるように紅く

家の裏には、大きな山がある。寒くなると紅葉が色付いて、山が燃えるように紅くなるのだ。
「おかーさん、おかーさん。やまがあかいよ！もえてるみたいだよ！」
「そうだね、燃えてるみたいだね」
小学一年生の息子とそう言いながら、窓から裏山を見るのが、この時期のささやかな楽しみだ。


その日、私は家を開けていた。当然夫は仕事。息子は家で留守番中。
用事を済ませてスーパーで買い物をしている時、スマホが鳴った。相手を確認すると息子から。何かあったら、と子供用の携帯を持たせている。何かあったのだろうか。
「もしもし！どうしたの！」
「おかーさん！おかーさん！やまがあかいよ！もえてるみたいだよ！」
その言葉に、一気に力が抜けて行く。どうやら、寂しくなったらしい。
「もうすぐ帰るから、一緒に見ようね」
そう言って電話を切る。急いで帰ってあげよう。


裏山で山火事が起こっているなんて、私は思いもしなかった。